トレーニングの考え方筋トレのフォーム・動作

パフォーマンス向上につながる筋トレのフォームを考える

パフォーマンス向上のために筋トレをおこないたいと考えるも、どんなフォームで行えばいいのかと悩まれる方がいます。

今回は、そうした方に向けて、筋トレのフォームの考え方やヒントとなる動作についてお伝えしたいと思います。

 

筋トレをする意味

こちらの記事にて、筋トレを導入するメリットを説明しております。

筋トレをオススメする理由
サイクリストに筋トレをオススメする理由の一つに、パフォーマンス向上が挙げられますが、これはレースだけでなく日常的なサイクリングを健康的に楽しむためにも有効です。興味のある方はこちらの記事を参考にしながら、筋トレに取り組んでみましょう。
筋トレを導入する3つのメリット
① パワーの向上
② 筋肉量の維持・向上
③ 運動効率の向上

正しいフォームとは

筋トレをおこなう際、まずは正しいフォームとは何かについて議論されることがあります。

 

例えば、スクワットではつま先よりも膝を前に出さないことや、つま先よりも膝が内側に入らないことなどが挙げられるでしょう。

 

確かに、怪我をしないことを前提とするならばその2点は意識すべきだと考えられますが、大腿四頭筋を中心に鍛えたいと考えるならばつま先よりの膝を前に出すことが、競技として重量を上げる場合はつま先よりも膝を内側に入れることが、それぞれ正解になることも考えられます。

 

筋トレにこれが全てという正しいというオールインワンのフォームはありませんが、目的目標を達成する上で安全かつ効果的なフォームが、自身にとっての正しいフォームと言えるでしょう。

 

フォームを考える

先ほども述べたように、筋トレのフォームは自身の目的目標によって異なります。

筋トレを行う目的目標は大きく3つに分けられると考えられます。
※ スクワットを例に添えて、お伝えします。

 

挙上重量(パワーリフティング)

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パワーリフティングのために挙上重量を高めることを目的としている場合は、自身の身体的特徴(構造)に合わせて、全身の筋肉を総動員させて効率的にバーベルを上げるためのフォームが正しいフォームといえるでしょう。

そのために、スクワットであれば効率的に膝を伸ばせるように、膝を内側に入れるという動作も許容されると考えられます。

筋肥大(ボディメイク)

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ボディメイクのために筋肉を肥大させたりカット(筋繊維)を出すことを目的としている場合は、ターゲットとしている筋肉にいかに効かせることができる(負荷をかけることができる)フォームが正しいフォームといえるでしょう。

そのため、スクワットであれば大腿四頭筋を鍛えるために、膝をつま先よりも前に出すという動作も許容されると考えられますし、決められた関節角度の中で動くという動作も許容されると考えられます。

運動機能向上(パフォーマンス向上)

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パフォーマンスのために怪我の予防および筋肉が発揮する出力が向上することおよび目的としている場合は、競技動作につながるための筋力を高めるために、筋肉の連動性を考えて柔軟性と筋力を養うためのフォームが正しいフォームをいえるでしょう。

そのため、スクワットであれば大臀筋に柔軟性の伴った筋力を与えるために、つま先よりも膝が前に出過ぎない状態で深くしゃがむという動作が必要になると考えられます。

 

こちらの記事では、ロードバイクのパフォーマンス向上につながるフォームについて言及していきたいと思います。

 

パフォーマンス向上のために

ロードバイクのパフォーマンスを向上させるためには、ペダリング動作に必要とされる下半身の筋肉の筋力と柔軟性を手に入れることが大切になると考えられます。

【ペダリング】ロードバイクを快適に乗るためのスキルと筋トレ
ロードバイクを進ませるためにはペダリングという技術が必要になります。適切なペダリング技術を習得することは、より速く漕ぐことができるだけでなく、膝や腰の痛みなく快適にサイクリングを楽しむことにも繋がります。今回はペダリングに必要となる筋肉と筋トレについて紹介します。

 

そのなかでも重要と考えられる筋肉の一つに、大臀筋があります。

この大臀筋を、パフォーマンス向上に繋がるよう最大筋力を高めたいと考えた時におこなうスクワットを例に、適切なフォームを考えてみましょう。

 

スクワットを例に考える

スクワットは、下半身を中心とする筋肉を鍛えるための効率的かつ効果的なエクササイズですが、主に3つの因子によって使用される筋肉や効果が異なります。

① しゃがむ深さ (関節角度)
② バーを担ぐ位置 (ポジション)
③ 足幅 (スタンス)

それぞれについて、説明していきたいと思います。

関節角度

まずは、しゃがむ深さについて説明します。

ロードバイクのパフォーマンスを向上させるために大臀筋を鍛えたいと考えた時、最も股関節を大きく動かすフルスクワット(大腿骨と地面が並行よりも深くしゃがむ)が最適だと考えらます。( Pallarés JG, 2021 )

大臀筋の持つ ROM : Range of Motion (関節可動域)を最大限に出して動きましょう。

バーポジション

次に、バーベルを担ぐ位置について説明します。

ハイ・バーポジション( C7 : 第7頚椎の下 )で担いでおこなうスクワット(HBBS)ロー・バーポジション( 肩甲棘下 )で担いで行われるスクワット(LBBS)に分けられますが、HBBSでは大腿四頭筋の稼働率が高く、LBBSは大臀筋の稼働が高いと考えられています。 (Glassbrook DJ,2017 )

合わせて、大臀筋を中心としながらハムストリングや脊柱起立筋といった隣接する背面の筋群 ( Posterior-Chain ) も稼働させることができるため、より力強く動くことができると考えられます。

 

スタンス

最後に、足幅について説明します。

ナロー・スタンス( 肩峰水平長の0.7倍 )ワイドスタンス (肩峰水平長の1.7倍)にわけて、それぞれハイ・バーとロー・バーで行った場合、ロー・バーワイドスタンス(LBWS)でおこなうことがその他の条件でおこなわれるスクワットに比べて大臀筋を中心とした股関節の筋出力の発揮が高いと考えられます。( Larsen S, 2021 )

ただし、 肩幅広いのに足が短い私(いとう)のような身体的特徴を有する方の場合、肩峰水平長の1.7倍はとんでもなく幅が広いので、Glassbrook DJ,2017 の論文で紹介されているように、 肩幅の 97 – 183% の間に抑えるべきだと考えられます。

 

適切なフォーム

以上のことから、パフォーマンス向上のために、大臀筋の筋力を最大限には高めるということを考えるのであれば、ローバーポジションでおこなわれるワイドスタンスのフルスクワットをおこなうと良いと言えるでしょう。

スクワットされる場合は、以上の動作を参考にしてみてください。

① ターゲットとする筋肉の明確化
② 筋肉(関節)がもつ最大可動域で動く
③ 筋 – 筋膜連鎖を考える
【考え方とフォームについて】
ロードバイクのスプリント能力を高めるために自身の大腿四頭筋が弱いから鍛えたいという場合は、ハイ・バーポジションでおこなわれるナロースタンスのフルスクワットが有効であることも考えられます。
※例 : 競輪選手など種目における様式(フォーム)の選択は、あくまでも自身が目的目標としている内容と身体的特徴によって異なるので、よく考えて実施しましょう。

 

筋トレ = 競技動作 ではない

時にパフォーマンス向上と称して、筋トレを競技に近い動作でおこなう方がいます。

・スクワットのしゃがむ深さをペダリングの間接角度に合わせる
・ペダリングは片足動作だから片足中心のエクササイズをペダリングの角度に合わせて行う
などが該当します。

 

筋トレは、あくまでも関節的にパフォーマンス向上につながるフィットネスを高めるための手段であり、直接的に競技パフォーマンス向上につながるものではありません

競技力を向上させるためには、基本的に競技練習をおこなうことが大切で、その中で発生するTransfer Effect (トレーニング効果の転移)によりパフォーマンスが向上していきます。

【SFR】ロードバイクのペダリングを向上させるトレーニング
SFR(Slow Frequency Revolutions) というトレーニング方法があります。かつてロードバイク上での筋トレと言われていたSFRは、今ではペダリングのドリルとして取り入れられています。こちらの記事では、SFRの意味をお伝えしたいと思います。

 

筋トレで全てを済ませるわけでなく、実際にロードバイクに乗ることも忘れないようにしましょう。

フィットネスとスキルの関係性
スキルの習得とフィットネスの向上について悩まれる方がいますが、基本的にはスキルはフィットネスに依存すると考えられます。パフォーマンスに伸び悩んだ時は、一度こちらの考え方を参考にした上でトレーニングのプログラムを考えてみましょう。

 

まとめ

今回はスクワットを参考にフォームの解説を行いましたが、パフォーマンスを向上させるためには他にも多数のエクササイズがあります。

それらのエクササイズにも様々なフォームがありますが、自身の目的目標に合ったフォームでおこなうように心がけましょう。

 

とはいいつつ、実際にはフォームだけでなく、1回のワークアウトの中で行われるエクササイズのセット数や回数に合わせて、各エクササイズの配列を考える必要があります。さらには、ワークアウトだけでなく1週間のトレーニングプログラムの配列を考える必要もあります。

筋トレを取り入れる
-運動時間の考え方-
トレーニングの一環に筋トレを取り入れる場合に気をつけるべき点について説明しています。今回は運動時間について説明をさせていただきました。これから筋トレを取り入れる場合の参考にしてみましょう。

 

意外と考えないといけないことばかりなので大変だとは思いますが、一つずつ試してみて自分に合う方法を探してみましょう。

【オススメ参考書物】
 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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・筋トレのパーソナルトレーニングのは こちら
・パワートレーニングのオンラインコーチングは こちら

 

参照

(1) ( Pallarés JG, 2021 ) Effects of range of motion on resistance training adaptations: A systematic review and meta-analysis

(2) ( Glassbrook DJ,2017 ) A Review of the Biomechanical Differences Between the High-Bar and Low-Bar Back-Squat

(3) ( Larsen S, 2021 ) Effects of Stance Width and Barbell Placement on Kinematics, Kinetics, and Myoelectric Activity in Back Squats

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