コンディショニング

筋肉痛がパフォーマンスに及ぼす影響

筋肉痛がある状態でロードバイクに乗ると、パワーが発揮できないと言われることがあります。

たしかに、私自身もそのように感じることがありましたが、時に筋肉痛があってもそう感じないこともあり、少し疑問を抱いていました。

本記事では、筋肉痛がある状態でロードバイクを漕いだ際、パフォーマンスにどのような影響があるかを紹介したいと思います。

筋肉痛の種類

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まずは、筋肉痛を理解しましょう。

筋肉痛とは、一般的に運動に伴って発生する筋肉の痛みを表し、専門的には運動誘発性筋損傷 ( EIMD : Exercise-Induced Muscle Damage ) といわれています。

そんな筋肉痛は、おもに以下の2種類に分類されます。

即発生筋肉痛 : ASM

即発生筋肉痛 ( ASM : Acute muscle soreness ) は、運動中または運動直後に発する短時間の痛みを表します。

ASMは、高強度で運動をおこなうことで筋肉が強く収縮し、筋肉の代謝物である水素イオンが溜まることで筋肉が急激に酸性に傾くことが原因で痛みが発生すると考えられています。

遅発性筋肉痛 : DOMS

遅発性筋肉痛 ( DOMS : Delayed Onset Muscle Soreness )は、運動した数時間後から翌日以降に一定期間生じる痛みを表します。多くの方が言う筋肉痛は、DOMSを表すことが多いでしょう。

DOMSは、筋肉を伸ばしながら力を発揮する伸張性収縮( エキセントリック収縮 )という動きで発生することが多く、ジャンプ動作の着地や、ウエイトの負荷を受け止める動きの中で発生しやすいといわれています。傷んだ箇所を修復する際に炎症反応が生じ、ブラジキニンなどの痛みを生み出す物質が生成され、筋肉痛が起こると考えられています。

 

本記事では、こちらの遅発性筋肉痛がもたらすロードバイクのパフォーマンスの影響について紹介したいと思います。

筋肉痛とパワー

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遅発性筋肉痛がある状態でロードバイクに乗っていると、確かにパワーが出ないと感じるときがありますが、果たして本当に筋肉痛が原因でパフォーマンスが低下しているのかが気になるところです。

そこで、筋肉痛とパフォーマンスの相関性について、サイクリストを対象に調査した論文あるので、ご紹介したいと思います。

論文紹介

( Karasiak FC , 2018 ) Effects of Exercise-Induced Muscle Damage in Well-Trained Cyclists’ Aerobic and Anaerobic Performances

筋肉痛がある状態でインドアバイクを漕いだ時、無酸素領域と有酸素領域のパワーにそれぞれどのような影響があるのかを調査した論文になります。

プロトコル

週6時間以上( 平均 8.9 ± 2.9 時間 )のトレーニングを2年以上継続した、男性サイクリスト9名を対象に、5日間テストを実施。

参加者のフィットネスは以下の通り。

Physiological and metabolic data from participants.* より作成

【1日目 】
身体測定とエルゴメーターテスト【2日目 : 前回から2~7日間空けて実施】

*****以下をプロトコルといいます*****
(a)筋損傷マーカーと出力チェック (Check)

1. 大臀筋・大腿四頭筋・ハムストリングス・ふくらはぎ・前脛骨筋の筋肉痛をチェック
2. 膝関節伸展(アイソメトリック収縮)の筋力をチェック

(b) サブマキシマルプロトコル
Pmax 60%と70%の強度で、それぞれ5分間走行
↓ ( 5分後 )
(c) 5分間タイムトライアル (Check)
5分間 全力で走行
↓ ( 10分後 )
(d) ウィンゲートテスト (Check)
30秒間 全力で走行
***************************************************

【3日目 : 前回から2-7日間空けて実施】
10セット × 10回の垂直跳び
↓ ( 30分後 )
コントロール

【4日目 : 前回から48時間後】
2日目と同じコントロールを実施

【5日目 : 前々回から96時間後】
2日目と同じコントロールを実施

結果

2日目のコントロールを基準とした、100回の垂直跳びを繰り返したあとの筋肉痛は、時間経過と共に以下のような状態となりました。

Graph of muscle soreness × time, in certain muscle groups and squatting. *p ≤ 0.05 when compared with control situation, in the same muscle group/position. より作成

 

また、同様に2日目のコントロールを基準とした、100回の垂直跳びを実施したあとの筋出力(膝関節の伸展)は、時間とともに以下のように変化します。

Graph of peak isometric knee extensor torque × situation. *p ≤ 0.05 when compared with other situations. より作成

 

また、それに伴う有酸素領域(5分間)無酸素領域(30秒間)の最大パワーは、以下のようになりました。

Effect of muscle damage in the perceptual, metabolic variables, and variables related to performance during the time trial.* より作成

Effect of muscle damage in Wingate test results.* より作成

1 ) 強いエキセントリック収縮が加わる運動では、48時間後に筋肉痛が発生する
2 ) 筋肉痛がある場合、最大筋力は一時的に低下する
3 ) 筋肉痛がある場合、有酸素・無酸素強度共に有意な差は見られない

 

考察

筋肉痛があることで、膝関節伸展の最大筋出力は低下するものの、ペダルを漕ぐという特異的動作の中で無酸素運動および有酸素運動にあまり影響がないという結果となりました。これは Discussion にて、プライオメトリック(垂直跳び100回)で刺激された筋繊維タイプの違いによるものではないかと示唆されていますが、とても興味深い考察だと感じました。

ただし、今回はあくまでも筋肉痛とパフォーマンスの相関性について研究した結果であり、筋トレで発生した筋肉痛とパフォーマンスの相関性を検証したものではありません。そのため、複数のエクササイズを組み合わせたワークアウト(筋トレ)をおこなった状態で発生した筋肉痛がある中で、ロードバイクのトレーニングを実施する場合は、少々結果が異なるのではないかと考えられます。

 

本記事のまとめ

筋肉痛は、ロードバイクでのパフォーマンスにあまり影響ないことが考えられます。

しかし、筋トレを実施して筋肉痛が発生した場合では、痛みの強さだけでなく、筋収縮が継続的に強くおこなわれる際の代謝のよる疲労や損傷する筋繊維のタイプなどが、ロードバイクでのトレーニングにも影響があることが考えられます。

そのためトレーニングとしての実情は、さまざまな考察を参考に、運動様式や実施タイミングを考える必要があるでしょう。

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本記事にていろいろと説明いたしましたが、実はまた筋肉痛に関しては解明できていないこともあります。筋肉痛のメカニズムに関する理解が進めば、これらの考え方もパフォーマンスに関する影響も変わるかもしれません。

引き続き、筋肉痛とパフォーマンスに関する相関性を学び、どのようにトレーニングにつなげていけばいいかを考えていきたいと思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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